耳の奥にコール音が響く。
次こそは、と携帯電話を強く握り締めてると、確かに繋がった音がした。



「もしもし、獄寺?」


『……………』


「もしもし?」




『………………、』




「もしも…『うるせぇ』



第一声がそれってどうよ。







■ ■■パステルコール■■ ■








『…こんな時間に何だよ』


「あ、いや…」



ベッドサイドの時計にちらっと目をやった。
時間は23時58分。
あと2分で獄寺から「おめでとう」が聞けるだろうか。
多分むり。



「…眠れねぇからちょっとの間、相手してくんね?」



沈黙。
せめて誕生日になった瞬間は獄寺の声を聴いていてーな。



『…何、てめぇ今日ちょっとオカシイぜ』



「あ…はは、そう?」



『………、別にいいけど』



「やった!じゃあさ、俺が質問するから獄寺答えてな?」



何だこの提案、我ながら首を傾げてしまう。
獄寺も訳がわかんねぇって声で返事した。



「じゃあ、えっと…獄寺って休みの日は何してんだ?」



『…10代目の家に差し入れ持ってってる』



「違う、そーじゃなくて」



俺が訊きてぇのは獄寺が家で一人でいる時何してるかってこと。



「暇な時何してんだ?」



『…あー、雑誌読んだり』



「どんな雑誌?」



『月刊世界の謎と不思議』



「…へぇ、そんなん読んでんのな」



獄寺の趣味って相変わらずよくわかんねぇ。
まあ獄寺かわいいからいいけど。



『…てめーは暇な時何してんだよ?』



「あー、俺?俺は野球」


『へぇ…』



「………」



『…………』



「ごくで『Buon compleanno』



「…え、何て?」



『野球馬鹿って言ったんだよ、てめーの頭には野球しかねぇのか馬鹿』



「馬鹿馬鹿言うなよなー」



はぁ、せっかくの誕生日なのに。
さっきのセリフにだって期待しちまった。
思わず「祝って」って言いそうになったけど仕方無い。
ここは我慢して引き下がるべきだろ、しつこい男は嫌われるって獄寺がシャマル見て言ってた。



時間は0時01分。
明日も朝練あるしもう寝よう。
だってこれ以上粘っても悲しいし。



「…ごくでら、眠くなってきたからもう寝るな?付き合ってくれてさんきゅ」



『…、おー』




ブツッと鳴って、ツーツーと音が響いた。





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