隣の温もりが動く気配に目が覚めた。
うっすらと開いた視界いっぱいにキラキラと光る銀色が眩しくて、またすぐ目を閉じる。





「…やまもと、カーテン閉めろ」






■ ■■パステルコール■■ ■








腕の中に丸くなっていた隼人がもぞもぞと動いてひどく掠れた声で言った。



「眩しいからカーテン閉めろ」



「えー…ねみぃ。隼人が閉めてくんね?」



眠い目をムリヤリ開いて隼人を見ると、ものすごく機嫌の悪そうな顔をしている。
出会ってから10年近く経ってると、その表情一つで何を言いたいかは一目瞭然。



「あ、そうだよな」



苦笑まじりに立ち上がってカーテンを閉めた。
ついでにコップに水を注いできてサイドテーブルに置く。



「つか、起き上がれっか?」



「…頑張ればな」



「ほんとわりぃ」



苦笑するしかなかった。
我慢がきかない俺は、久々に2人きりで過ごせる夜とかになるとそれこそ隼人が気を失うまで(ひどい時は気を失ってた隼人を起こしてまで続けちまうし)貪っちまうんだよな。
隼人も文句は言いつつ嫌がらないからそれでいいんだと思うけど。


まあとにかく、昨晩も例外じゃなくて。
労るように隼人の髪を撫でて額にキスした。



「ごめんな?」



「…この、体力馬鹿…」



気怠げに呟かれた声と首の後ろに回された細い腕。
引き寄せられるままにシーツに縺れ込んだ。




「Buon compleanno」



隼人が楽しそうに囁く。
首を傾げた俺に愉快げな笑顔を向けた。



「おめでとう、って意味」



今日、お前の誕生日なんだぜ?




隼人にたった今言われてやっと気付いた。
成程、最近忙しいのにも関わらずツナが俺と隼人に休暇を与えてくれたのはこういうことか。



「…さんきゅ、隼人」



「忙しくて何も用意してねぇけど」



「別にいいって。それより俺思い出したんだけど…」



「…何だよ?」



「中学の頃、俺、自分の誕生日に獄寺に電話してさ」



「おう」



「んで繋がったのに切られて」



「へぇ」



「次に掛けたら出てくれて」



「ん」




それで、今みたいに俺の誕生日祝ってくれたろ?



「今になってやっと意味わかった。ちゃんと祝ってくれてたのに嘘付くなんてお前らしいな」




懐かしむように言って目を細めると、目の前の隼人もニッと無邪気に笑った。
俺は調子に乗ってもう一言。




「隼人も昔から俺のこと好きだったんじゃね?」



「さあな。覚えてねーよ」




べ、と意地悪く突き出された舌を絡め取ってベッドの軋む音に身を任せた。




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08.04.23