―夢を見た。
目が覚めると、隣で裸の兄さんが寝ていた。
僕は衝撃のあまり動けなかった―はずなのだが、意識とは別に体は勝手に動き、僕は兄さんの額にキスをした。
■ ■■想い■■ ■
それが夢じゃないと直ぐに気付いた。
だけど、僕自身に起こっている事実でもない。
兄さんと、誰かに起こっている事だ。
それに気付いた途端、重い何かが僕の胸に刺さった。
もう帰ってこないつもり?
何やってんだ、バカ兄。
不意に、室内にノック音が響いた。
ドアを開けると、煙草を咥えた軍人。
「ホテル内では禁煙になっております、お客様」
からかう様に笑うとバツが悪そうに煙草を口から離した。
「そもそも未成年の前で煙草ばっかり」
踵を浮かせて、屈んだ少尉の顔との高さを合わせる。
目を閉じてそっとキスすると、軽く抱き締められた。
「セックスの味知ってる奴は未成年じゃねぇよ」
お互い顔を見合わせ、笑った。
ドアの開く音で目を覚ますと、少尉はいなくなっていた。
大佐に会いに行く前は、必ず僕を抱きにくる少尉。
兄さん早く戻ってきて。
大佐は脆い。
壊れてしまう前に戻ってこないと、少尉は大佐の方へいってしまうから。
お願い、兄さん、早く―。
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