―あぁ、またやって来た。年末に引き続き、忙しい時期が。
■ ■■男の人は2倍返しで大変ね■■ ■
「大佐ァ、仕事しないんスか?」
「お前が余計な知識を軍に広めたから、今こんな事になってるんだぞ?」
溜息混じりに大佐が俺に視線を寄越す。
俺は敢えて目を合わさずに前を向いて運転した。
「貴方が忘れていたから悪いんでしょう、今日になって気付くなんて」
いつもコレだ。バレンタインの風習を軍に広めたら、大佐は大量のお返しをしないといけなくなった。
だが14日になって、その事に気付くのだ。
今年も例外ではない。
「忙しくて忘れていたんだ」
のうのうと嘘を吐く。
昨日ソファでサボっていたのはどこの誰だと問い詰めたい衝動に駆られた。
「…大佐、俺もあげたの覚えてます?」
一番気になっていた事だった。
義理であげたのではない分、お返しは貰えるのか。
車を止めて大佐を見つめる。
漆黒の瞳が愛しい。
「…お前へのお返しは、」
不意に大佐の髪が額に触れた。
と思ったら、唇が触れ合った。
「…た、」
「忙しくて、これ位しかやれんがな」
悪戯っぽく微笑む大佐を抱き締めた。
忙しいホワイトデーも、悪くないな。
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06.03.14