瞳に、焼き付く。
焔。
離したくない。
離してほしくない。
消えない影。
オトナ。
コドモ。
不安。
羨望。
懺悔。
■ ■■恋愛カタルシス■■ ■
鋼のが、久々にやって来た。
暫く会わないうちにだいぶ大人っぽくなったようだ。
「久々だな、今度の旅はどうだったんだね?」
机越しに鋼のの頬に触れる。
「そんなこと興味ないだろ、アンタは」
あぁ、君は賢いね。
わかっているなら無駄な会話は要らない。
深く口付けを交わすだけ。
「く…っぁ、はがね…の」
思考が止まる。
本能のままに躯を動かす。
快楽に身を委ねて、机上の書類は床に散らばってしまった。
頭も躯もどろどろで、もうそれすら気にならないのだが。
「なぁ、虚しくねぇ?俺は中佐じゃないんだぜ?」
自嘲的な声と共に耳に優しいキスを落とされる。
うっすらと目を開いて金の瞳を見つめた。
「アンタは俺を見てない」
なるほど、コドモは敏感だ。
いくらオトナが悟られない様にしても気付いてしまうのだろうね。
だが、違うよ。
確かに私は君を見ていないがヒューズを見ているわけでもない。
答えずに苦笑すると鋼のが眉を潜め角度を深めた。
「ん…ッぁ」
ピクリと汗ばんだ躯が反る。
甘えた声が漏れる。
脳裏に焼け跡が映る。
「俺を、見てよ」
鋼のの言葉が、部屋に響いた。
目を開けて、微かに微笑む。
君は本当に美しいね。
脳裏に焼け跡が、映る。
人の悲鳴が聞こえる。
私が見ているのは君じゃない。
幾人もの人。
私が焼いた人々。
私は君と彼らを重ねる。
死人に犯される。
君は、人を愛する資格の無い私に愛を思い出させる。
懲りずに人を愛してしまう私は罪悪感から二度と抜け出せない。
それで、良い。
君との恋愛は、償いの儀式なんだ。
罪を清める行為なんだ。
文句は無いだろう?
君だって、罪人なのだから。
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06.06.02