―大佐に触られるのには慣れた。
きっかけは単純、生きているのが恐かったから。
アルフォンスに触るのにも慣れた。
きっかけは簡単、代わりが必要だったから。
■ ■■瞳■■ ■
―気が付くとそこは、僕の知らない世界だった。
僕の時間は止まっていたのに、世界は容赦なく周り続けていたらしい。
言い知れぬ不安に襲われた。
―突然君は私の前から姿を消した。
君にそっくりな弟を残して。
言い知れぬ孤独感に苛まれた。
―不安を和らげてくれたのが、大佐。
兄さんの話を沢山してくれた。
―孤独を紛らわせてくれたのは、アルフォンス。
兄と似た仕草、兄よりも人懐っこい表情。
―大佐は、僕に兄さんを重ねている。
それは構わない。僕だって誰でもいいのだから。
―アルフォンスは私に期待していない。
それは構わない。
期待に応える事すらできないだろうから。
―大佐の瞳に映るのは、僕の姿をした兄さんだ。
―
アルフォンスの瞳に映るのは、彼を眼にも留めない私の姿だ。
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06.02.08