暖かな陽射しが窓から差し込み、ベッドに横たわる身体に降り注ぐ。
気温が高くなってきた寝心地の悪さに、目を覚ました。


「な……」


何でこんなことに?





■ ■■ごく何気無い日常の、くだらない話■■ ■





呆然としてしまって二の句を継げない俺の隣りで、大佐が小さく唸って目を覚ました。


「……な」


大佐も二の句を継げなくてただ呆然と俺を見つめた。


「…は、がねの。これはどういったことだろう…」


「…俺に訊かないでほしいんだけど」


だって、覚えてないし。


お互い、呆然と見つめ合う。


何で、俺と大佐が裸でベッドで身を寄せて寝てるんだ?
心なしか腰の辺りのベッドシーツが、濡れている気がする。
寝不足なのか、お互い少し疲れた顔をしているし、身体も湿っている気がする。



気まずさにお互い押し黙ってると、大佐の背後から唸り声が聞こえた。
大佐が振り返ると、呆然としたハボック少尉の顔があった。


俺らはただ沈黙していた。
変な汗が出てくる。


突然ガバリと大佐が起き上がり、身体の上に被さっていたシーツで下半身を隠した。
自分の身体を隠す布がなくなったのに慌てて、俺らも起き上がりシーツを引っ張って下半身を隠した。
ホテルの一室で、ベッドに正座して向かい合った状態で黙り込む3人の男。
かなり滑稽だ。



口火を切ったのは、大佐。


「…私ではないぞ」


「…俺も違う」


どこも痛くない。


お互いそれを確認して、2人揃ってハボック少尉の顔を見る。
少尉はたじろいだ様子で言った。


「いや、俺は有り得ないでしょ」


どこもおかしくないですし。



ホッと皆で胸を撫で下ろした瞬間、大佐が衝撃的な表情を浮かべた。


「…こんな物が、ここに」


大佐が背後から、何かを掴んで俺達に見せた。
それはなかなかグロテスクな突起のある、まぁつまり俗に言うバイブで。
3人は一気に硬直してしまった。
暫く押し黙っている。
少しして大佐がシーツの上にソレを置くと、シーツが透けた。


「…な、何で濡れてるんだ?」


「…俺に訊かないでほしいんだけど」



また気まずい沈黙が生まれ、少し冷静になって部屋を見回すとビリビリに裂かれた服が目に入った。


大佐のであろうカッターシャツのボタンが床に散らばり、いたる所が裂けている。
俺と少尉は、まじまじと大佐を見た。


「…アンタじゃないの?」


「ちょ、ちょっと待て。違うって」


慌てて首を振る大佐。
よく部屋を見るとそれぞれの靴がそこかしこに脱ぎ捨てられ、上着も、その中に着る物も全員分ある。
しかし、ズボンと下着だけがこぞってないのだ。


「…ホント、この状況なんなんだよ…」


「…あ!アレ。」


少尉が突然部屋の隅を指差した。
ゴミ袋に大量にビール缶が詰め込まれている。
なるほど、俺達は泥酔したせいで記憶が無いのだ。


「…ここまでを繋ぎ合わせると、俺達は酔っ払って服脱ぎ散らかして大佐のシャツを無理矢理引き千切って全員裸でバイブを濡らしてベッドまで濡らして起きた。…ってことになる」



そう言った後、3人同時に気持ちの悪い想像をして吐きそうになる。





その時、急に扉が開いた。
ガシャンという足音と共にアルが入ってくる。


「あぁ、皆もう起きてたんだ?」


手に袋を下げたアルは、何事も無い様子で部屋に入ってきた。
そこで泣きそうな3人の表情を見て「何かあったの?」と尋ねる。
俺は逆に訊き返した。


「昨日、何があったんだ?」



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続きます


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06.08.20