ついにやってきてしまった。
何がって、ホワイトデーが。
バレンタインに山本からブレスレットを貰ったまではいいが、この一ヵ月間、お返しに何をくれてやるか悩んで悩んで結局決まらずに今に至っている。
(くそ、手ぇわずらわせやがって…)
■ ■■これしかないでしょう!■■ ■
「10代目、今日は14日ですよね」
「…うん」
「10代目、お返しご用意されました?」
「…うん」
「…………」
「…………」
朝の登校中。
緊張していらっしゃる10代目と悩み続けてる俺。
沈黙が生まれたところで今の10代目や俺にはさして気になりはしない。
「…獄寺クンはさ、山本にもあげるんでしょ?」
さすが10代目、よく御存じで。
「そのブレスレットを貰ったんだよね?」
10代目の視線が俺の右手首のブレスレットに向く。
そこまで御存じだったとは。
「お返し何あげるの?」
「…それが、まだ決めてないんすよ」
「やっぱり」
ですよね、御存じですよね。
「でもさぁ、山本なら…」
「「ごくでらが欲しいのなって言いそう」」
「だよね」「ですよね」
当然のように10代目とハモる。
そんくらい山本はわかりやすい。
つーか馬鹿だ。
既に学校まで辿り着いて靴箱から上靴を取り出している最中、10代目が諦めたような声を出された。
「もうお言葉に甘えちゃったら?」
「…え?」
「獄寺くんをあげちゃいなよ」
じゅうだいめ、そんな投げやりな。
思わず上靴から手を離すと落下してボテッと鈍い音が鳴った。
そしたら、
「はよ、ツナ!獄寺!」
いきなり背後から快活な声が響く。
それはまごうことなき野球バカの声で、俺を悩ませる原因だ。
「なぁ、獄寺」
「あ?なんだよ…」
「バレンタインのお返しってもう用意し「してねぇ」
即答。
つーか最後まで聞いてねぇけど。
もし用意してても教えてやんねぇよ。
「ホントか?よかったのなー」
あ?てめー今何言ったよ?
「俺からのはいらねぇってか?」
山本ごときの為にあんなに悩んでやった俺。
怒りはそりゃもう一瞬で着火。
ボムを投げ付けてやろうと構えたら10代目から制止の声が掛かった。
のでやめた。
そしたら困り笑顔の山本(実はこの表情が好きだったりする)が屈んで俺に耳打ちをする。
「……っな、///」
「ってわけで、物はいらねぇから」
「え?何、何て言ったの?俺にも教えてよ」
「知りてぇ?あのな…」
「「ごくでらが欲しいのな」」
「って」「でしょ」
本日2度目のハーモニーを奏でたのは10代目と山本のなんとも明るい声。
見事なまでのハモりっぷりだ。
「ははっ、バレてたか」
なんて笑って。
馬鹿だろお前。
もう俺ベタすぎて恥ずかしくてまともに授業とか受けれません、じゅうだいめ。
だからその馬鹿連れて帰らせていただきます。
ほんと恥ずかしい奴ですみません。
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08.03.14