暑い暑い夏の風物詩。
ミーンミーンと蝉がけたたましく鳴いている。
群れた人間がざわめきながら行き来する中、生命を力いっぱい生きている声に少し顔が綻んだ。





■ ■■金魚すくい■■ ■





今日は祭りの日。
色んな人間が浴衣を着たり着ていなかったりで屋台を楽しんでいる。
正直群れる人間は見るのもイヤだし暑いのも嫌いだけど、並盛の秩序は守らなきゃだし。
屋台の売り上げ金だって徴集したいし。



仕方無く神社の周りをくるくる歩いていると、くぐもった声が聞こえた。
少し汗ばんだ声。
それが何をしている声かは直ぐにわかって。
だからといって僕の並盛で、屋外で淫らな行為をするなんて許せるわけないので、声のする方へ足を進める。
そうすると、聞こえる声はどちらも男なのだとわかった。
しかもどちらも聞いたことのある声。
気配を隠してそっと人影を見つめると、小さな電燈を頼りに目を細めた。


「あ、や…まも、んぁ…っ」


「ごくでら…」


ワォ。
こんなトコで男同士で暑い中何やってんのさ。
しかも君達、中学生でしょ。
思春期なのはわかるけど、少し自重してみれば?


とは言っても知っている人間の行為を見るのはなかなかそそるもので、僕はちゃっかりそのままその行為を見続けることにした。

そもそも山本のあんなに欲望に満ちた瞳を見たことがなかったし、獄寺の艶っぽい恍惚とした表情も見たことがなかったから、興味が湧いた。


「あっ、はぁ…も…イク…」


「…オレ、も…っ」


「っン、あ…っんん!」


獄寺が一層ビクビクと震えて欲を吐き出した。
目を凝らすと目の端を涙が伝っているのがわかる。
泣く程よかったんだ?
頬を赤らめて、浅い呼吸を繰り返して、汗でくっついた髪の毛をかきあげて。
「よかった?」なんて訊かれて、目を逸らして照れた顔で「…だまれ、」とか言って。


ああ、僕もこの子が欲しい。
泣くほど痛め付けて、優しく抱き締めて、ひどく卑猥なことしてまた泣かせて。
そして僕に陥落させたい。


山本とか厄介なのがいるけど、問題無い。
こんなの金魚すくいみたいなもの。
ポイをすり抜けていく可愛い金魚をムリヤリ掬い上げて、自分のモノにする。
何だかとても楽しみだね。


暑い暑い夏の風物詩。
きんぎょすくい。
蝉の鳴き声より何より君の啼き声が聞きたいよ。




back
07.08.26