アルフォンスと関係を持ってから、数日が経った。
あの日から俺たちの距離は急速に縮まって、今では恋人同士と言ってもいいほどだ。
だが俺は、いまだに元の世界に帰ることを切望して止まない―。





■ ■■偽り■■ ■





今の俺は、元の世界に帰る事を望んではいけないのかもしれない。
だけど元の世界に残してきたいろいろな事が、気掛かりで仕方ないんだ。

もし、俺がアルフォンスを連れて大佐の前に現れたなら。
優しい大佐はきっと苦笑してこう言うだろう。

「君が彼を選んだのなら、仕方無い」

大人ぶって、本当は誰よりも孤独で繊細なのに。
大佐だけでなく、アルフォンスも凄く優しくしてくれる。
二人とも、俺が大切な事を隠しているのも知らずに―。


「兄さん」


俺の記憶に残る弟の姿は10歳。
14歳までは行動を共にした。
今はいくつなのだろうか。
生きているだろうか。
会いたい。
声が聞きたい。
触れたい。
抱き締めたい。

生きているのなら、できればキレイな躰でいてほしい。
俺以外に触れられてほしくない。


元の世界に帰ったら、抱き締めて一番に言ってやるんだ。

「会いたかった、俺はアルを誰よりも愛してる」


それが例え彼らを傷付けようとも。


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06.03.18