街中は甘ったるいムードに包まれている。
あぁ、そうか。今日は2月14日だっけ。
好きな人や世話ンなってる人に贈り物を送る、あの日。
大佐は今頃何をしているだろうか。
■ ■■バレンタインがないなんて嫌だ。■■ ■
「…」
机の上に広がる小さな箱の山。
さて、どうやって片付けようか。
軍に着くまでにこんなに貰えるとは自分でも思っていなかった。
私の恋人は何も寄越す気配がないのに。
「あ、このハンカチ。ブランドもんスよねぇ」
部下達に手伝わせながら、箱を開けていく。
入っていた酒入りのチョコレートを口に含みながら憂鬱な気分で作業を続けた。
あぁ、お返しが面倒だな。
仕事も沢山あるのだがね。
―突然、電話がけたたましく鳴った。
「もしもし、大佐」
いつもの声だ。
「やぁ、どうしたんだね」
強がってみる。
「…ハッピーバレンタイン」
あぁ、口の中で甘く広がるチョコレートよりもブランドのハンカチよりも。
君の声が一番私の憂鬱な気分を吹き飛ばすね。
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06.02.14