バレンタインデーの朝―。





■ ■■甘い贈り物・1番は誰だ side:Roy■■ ■






ロイは家を出て雪を踏み締めながら司令部に向かっていた。
息が白い。
この時期にこんなに寒くて良いのだろうか。
あまりこの辺りは雪が降らないはずなのに。

「大佐、おはようございます」

ブツブツ文句を言っていると、目の前に金髪美女…もといホークアイ中尉が立っていた。
彼女も白を吐いている。
雪の白さで一際美しく見えた。

「ああ、中尉。こんな所で会うとは珍しいね」

「ええ、今日は父のお墓に寄って行こうと思いまして」

「…?命日はまだ先だろう」

「今日はバレンタインデーなので」

「ああ、そうか。近頃忙しくて忘れていたよ」

ああ、そういえばそんなものがあったな。
と記憶の引き出しを探る。

「大佐にも用意していますよ」

リザは柔らかく微笑んだ。
今日の彼女はやけに優しい。

「おや、気が利くじゃないか」

満足げに微笑んでプレゼントを受け取る。
彼女も満足げだ。

「お返しは仕事で返して下さい」

「…わかってます」

最後の一言に折角の気分が崩された。
彼女の魂胆はそういうことなのだ。
“今日は優しくしてあげるしプレゼントもあげるからその代わりしっかり仕事しろ”ということだ。


とぼとぼと司令部に向かっていき漸く着くという所、またもや金髪。
今度は男が3人だ。
白い息を吐きながらこちらをぼんやりと見ている。
鋼のはマフラーを付けていない。
寒そうだ。
マフラーを掛けてやると鋼のが少し頬を染めた。
子供らしくて可愛い表情だ。
鋼のは私に惚れているのかもしれない。




何だかんだするうちに、いきなりアルフォンスからキスのプレゼントを貰う。
呆然とする私の耳元に囁かれた言葉は、

「貴方ばかりモテて狡いから、嫌がらせv」

確かに、朝ホークアイ中尉から贈り物を貰っていなければこれが最初のプレゼントとなる。
バレンタインの一番最初のプレゼントが自分に悪意を持つ男からのキスだとは、悲し過ぎる。
有効な嫌がらせだと思った。

結局3人からは美味しい物を貰えたし、しかも悪意も全く感じられなかったので(むしろ好意が感じられた)すごく嬉しかった。
大切な、優しい者達に囲まれている私は何とも幸せ者だ。



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07.04.23